金丸良子教授による公開講演会が開催されました!
テーマは「北京・民間風俗画の世界」

2013/07/17

 本学外国語学部の金丸良子教授が、平成25年6月29日に麗澤大学生涯教育プラザ1階のプラザホールにて、「北京・民間風俗画の世界」と題して講演しました。当日は38名の方が参加し熱心に聴講しました。
 金丸教授による公開講演会と展示会は、麗澤オープンカレッジが開校した平成18年から始まり、通算15回目。今回は、中国で「三百六十行(サンバイリュウシハン)」と称される伝統的な手工芸職人の世界について、清朝末期から民国時代にかけての生活文化とともに洒脱な風俗画として紹介されました。関連する演劇作品の映像や風俗画のスライド写真、関連書籍等も多数公開され、非常に興味深い講演会となりました。

 まず、金丸教授は、北京と上海という中国の二大都市を比較されました。早くから欧米化が進んだ上海には街の変化を記録した古い写真が数多く残されており、来年はそれらをテーマにした講演会と展示会を開催するつもりであること、一方、北京には、写真のかわりに、今回のテーマとなった数多くの風俗画が残されていること、両者の違いも興味深いと指摘されました。また、金丸教授は、北京出身の作家・老舎の著名な戯曲『茶館』の舞台を映像化した作品や、台湾の作家・林海音の映画『城南旧事』、NHKスペシャル「アジア古都物語第一集 路地裏にいきづく皇都」、風俗画のスライドの一部などを紹介され、北京の風俗について解説されました。

 次に、伝統的な手工芸職人の世界が「三百六十行(サンバイリュウシハン)」と称されるようになった経緯について、時代を追って次のように解説されました。「中国では歴史上、人間界をいくつかの群れに分類した。殷周時代には『士農工商』の『四業』であった。司馬遷の父・司馬談は『論六家要旨』の中で、「陰陽、儒、墨、名、法、道」の「六家」を分類した。劉歆は『七略』の中で、司馬談の分類の基礎の上に、「縦横、雑、農、小説」などを加えて「十家」とした。班固は『漢書・藝文誌』の中で、劉歆の分類を踏襲し、「小説家」を取り除き「九家」とし、「九流」と称するようになった」と。また、「『九流』の言い方についても諸説あり、定説が存在しないこと、社会の変化にしたがって、民間ではさらに『九流』が27種の職業に発展し、『上九流』『中九流』『下九流』に分類されるが、これも諸説あって定説が存在しない」と述べられ、その中でも比較的よく通用している分類について紹介されました。
 続いて、「中国では、各種の職業を『三十六行』『七十二行』『三百六十行』等と表現するが、これらもみな『九』の倍数で『九流』に起源があると考えられている。『行』は『店』の意味で、『米行』は『米屋』にあたる」と指摘されました。配付された資料には「三百六十行」に数えられる主な職業として、「剃頭図(理髪師)」「算命先生(算命学による占い・易者)」「糖炒栗子(甘栗売り)」「打更(夜回りの拍子木打ち)」「大鼓書(鼓を鳴らし語りものをする大道芸人)」「足療(足の治療をする職人)」「布袋傀儡戯(手指人形芝居の大道芸人)」「看香(佛などに香華を供える人・係)」、「補凉席(ござを編む職人)」「未白瓜桃(白瓜を売る行商人)」などが挙げられており、それらを見ていると当時の人々の暮らしぶりがイキイキと伝わってくるようでした。
 最後に金丸教授は、「私たち日本人も中国人もお互いを知っているようでまだまだ知らない部分がたくさんあるのではないか、そういう視点を持ってそれぞれの文化を見ていくことが重要」と締めくくられました。

 講演会終了後は、聴講した多くの方々が金丸教授とともに展示コーナーに移動して、設置された風俗画を見学しました。展示コーナーには、金丸教授ご自身が蒐集(しゅうしゅう)された、飴色に輝くローズウッドの椅子やテーブル、大きなサモワール(お湯を沸かすためのヤカンの一種)に茶器などがしつらえられており、北京の風俗画の世界を盛り立てていました。聴講した方々からは「今回初めてこの講演会に参加したが、とても楽しかった。次回もぜひ参加したい」、「中国の職業の様子や北京の文化がわかって興味深かった」、「風俗画の軽妙なタッチが気にった。中国に行ったらぜひ手に入れたい」等の声が寄せられました。今回の講演会で、聴講生の方々はつかの間、北京の茶館にいる気分を味わい、中国の市井の人々の暮らしを垣間見ることができたのではないでしょうか。
 なお、後期の講演会・展示会は「中央アジア・キルギス族の世界」が予定されており、現在、お申し込みを受け中です。詳しくは、こちらをご覧ください。

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